「青春18きっぷ、使いきれないからいりませんか」
旅好きの友人から連絡が来た3日後には、尾道へ向かう電車に揺られていた。
元々、旅行は好きな方ではあるものの、金欠だとか計画性のなさだとかを理由にして、泊まりがけの一人旅に出るのはこれが初めてだということに気付いた。びっくりだね。(音楽関係の遠征と法事を除く)
いつもはしっかりものの友人(達)に旅程を任せて、自分はぼんやりしたり、現地で勝手に個人行動をしたりと楽しくやらせてもらっていたけれど、さすがに電車の時間くらいはガッチリ調べていかんと不味いのでは、と思い、前日の夜に蛇腹便箋にひたすら書き付けた。やれば出来る。
どこに行ってどうこう、詳細な解説、なんて記事なら、もっと上手く書いてるひとがたくさんいると思うので、今回は個人的な旅情ばかりを綴ることにします。
モーニングは加古川のニシカワパンにて。
アーモンドトーストが最高なのよ……
近年の私は、県を跨ぐような移動を出来るだけ避けていた。
これは、感染症対策がどう、とかいう話ではなくて、体調的な問題で公共交通機関に乗ることが厳しくなってしまったのが理由である。
人が多い車両は駄目。乗り換えも駄目。雨の日はもっと駄目。
神経がザワザワとして不快でたまらず、とても乗っていられない。おなかも壊す。ふらふらで途中下車することも多い。
しかし、最近それに転機が訪れた。
8月から心療内科で新たに処方して貰うようになったある薬がよく効いて、普通に快適な感覚で、街を歩いたり電車に乗れるようになってきたのだ。ちなみに眩しく感じることも減った。
これには本当に感動してしまった。
ああー 昔の自分はこんな感じだった、そうだ。
自分に合う薬探しの旅は続く、全然油断は出来ないのだけど、そんなタイミングの後押しもあって、今回の尾道旅行は実現出来たのかなと思う。リハビリだね。
尾道到着、つたふじにて中華そばを食す。
ひたすら瀬戸内海の海岸沿いを散歩、のち千光寺へ。晴天に恵まれる。海と山、坂道、階段、神社仏閣、その景観に凝縮された歴史を感じる。
そういえば、尾道に興味を持ったきっかけは志賀直哉の『暗夜行路』だったなぁ。
写真は余るほど撮ったので、お気に入りのものだけ少し。実物には到底及びませぬ。
夜は尾道の少し東、福山に移動してホテル泊。
Go To Travelの恩恵で、いつもより少し良いホテルに泊まった。なかなか楽しい経験である。
しかし風呂は近場の銭湯に行く。良い。
2日目は、バスで南に出向いて、鞆の浦へ。
景勝が見事で、本当に圧倒されてしまう。
写真なんかじゃ伝わらないよ~
訪れたのが平日だったこともあり、街並みは少し寂れているようにも思ったけれど、歴史的な建造物の荘厳なこと!江戸時代の湾岸施設が揃って残っているのは大変貴重なことらしい。
なんせ、江戸時代には北前船の寄港地で、朝鮮通信使も立ち寄ったというのだから、納得である。
この、江戸時代からある常夜灯は、船の出入りのための灯台として、ずっと使われてきたもの。
歴史好き、海辺の暮らし好き人間なので、この上なく、ときめく。
街歩きをしていたら酒屋を見つけ、家族へのお土産に!と思い立ち寄る。素敵な店員さんが試飲をすすめてくれて、アルコールに弱い自分はほろりとなってしまう。
購入したのは保命酒という歴史ある地酒で、かの黒船で有名なペリーも飲んだとか。
(当時の老中の阿部正弘が福山藩主だったからだね)
休憩がてら、茶店へ。純喫茶ルナのプリントップ、美味しすぎる。死ぬまでに絶対もう1度は食べたい。
なんだかすっかり満足し、潔く15時過ぎの電車で帰る。20時台帰宅。良いじゃないか良いじゃないか。
一人旅の良さを満喫しきった2日間。
どこにいても、何をしてても、自分は自分なのだと思い知る。マイペースとは自分と向き合うことではないだろうか。
これから先、行きたいと思っている旅行地は色々あるけれど、一人で行きたい場所と、誰かと行きたい場所は、明確に違うような気がした。
いま一人で行きたい場所は賢島、内子町、指宿、お友達と行ってみたいのは道後温泉とか、かなぁ。
お金はいつも本当に本当にないので、あとは良いご縁を天に祈るのみ。
帰路、姫路でえきそばを食べる様式美。
そういや、旅の恥はかきすて、なんて言葉があるけれど、自分はそうは思えなくて、旅先の方がシャンとして過ごしている気がする。ホテルのシーツやタオルなんかも意外と整頓して帰るタイプだったり。
どちらかといえば、人生の恥の方が、かきすてなんじゃないかな……みたいなことを思ったり、思わなかったり、しながら、京都へ帰る。
10年前、高砂に住んでいた頃は、連休があるたび京都に遊びに行っていたのに、いつの間にか京都は帰る場所になったんだねぇ。
この電車は、新快速、京都方面米原行きです。
次は、芦屋、芦屋―――